“Grexit” & “Snap Election” / 「ギリシャのユーロ圏離脱」と「総選挙」

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(出展:Wikipedia

2015年1月25日、ギリシャで総選挙が行われます。
緊縮財政反対の野党が勝利する可能性が高く、その際にはギリシャのユーロ離脱も有り得ます。

ギリシャは、GDPの規模で言えばユーロ圏全体の約2%に過ぎないのに、なぜいつもこれほど大きな話題になるのでしょうか?
※ユーロ圏全体のGDPは13兆USドル(以下「ドル」)、ギリシャは2400億ドル。

その理由を探るため、ギリシャのEU加盟から現在までの流れを各誌記事を参考に追ってみました。

1)”Adoption of the Euro”「ユーロ流通開始」

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(出展:Wikipedia

流通通貨としてユーロを採用する事を、
“Joining the EMU(Economic and Monetary Union)”
と言います。
※”join the Euro (zone / area)”でも同じ。

2002年、ギリシャは自国通貨としてユーロの流通を開始しました。

ユーロは流通当初、ドルに並ぶ(もしくは取って代わる)基軸通貨として期待されていたため、明らかに過大評価されていました。

2002年始めの為替相場は、1ユーロ=0.9ドル
それが2009年には1ユーロ=1.5ドルと、50%以上下落(ユーロ安=ドル高)しています。

2)”Property Bubble” 「不動産バブル」

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(出展:Canada”s Condominium Magazine

「不動産バブル」は、
“Real Estate Bubble”, “Housing Bubble”
とも言います。

古代の遺跡やエーゲ海など、観光やリゾート産業は今も昔もギリシャ経済の中心です。

国外の投資家にとってギリシャの不動産は魅力的でしたが、ユーロ導入以前は為替リスクや資本規制が大きく、国外からの投資は抑制されていました。

これらのリスクがユーロ導入によって取り払われたため、国外の投資家が一気にギリシャの不動産市場に殺到しました。

1993年から2006年に掛けて、ギリシャの住宅価格指数は3倍以上に値上がりしました。

3)”Cooking the book” 「粉飾財政」

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(出展:Talk Money Cafe

「粉飾決算」「帳簿操作」の事を、“Cooking the book”と言います。

EUは加盟国に健全な財政規律を要求しており、財政赤字をGDPの3%以内に抑えるように求めています。
罰則の規定もありますが、景気が悪い時には大目に見ているようです。

罰則の適用はユーロ参加国に限定されており、当該国のGDP比0.5%を上限に、EUが制裁金を課すこととなっている。ただし、深刻な景気後退期等の場合には例外規定があり、例えば、実質経済成長率が▲2%以下の場合には、制裁金は課されない

(出展:内閣府

ギリシャは最初、2009年の財政赤字を3.7%と発表していました。
しかし、2010年の政権交代を機に、財政赤字率を何度も修正申告。
最終的には15.6%という4倍以上の数字に膨らみました。

4)”Rise of Interest Rate” 「国債利回り上昇」

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(出展:Bloomberg

粉飾財政によってギリシャ国債の信頼は崩れ去り、利回りは5%から38%まで急上昇しました。

国債はその国の最も信頼性の高い債券(借金)であり、銀行貸出を含むあらゆる借金に影響を与えます。
ギリシャ全体の借金の利回りが急上昇し、市場からお金が消えました。

結果、

  • 不動産バブルの崩壊
  • 企業活動の沈滞化
  • 失業率の増加

が引き起こされました。

5)”Bailout by Troika” 「EU・ECB・IMFによる資金援助」

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(出展:SCRAPE TV

「財政支援」「資金援助」は、“bailout”(救出)と言います。
“Troika”は、

  • EU(欧州連合)
  • ECB(欧州中央銀行)
  • IMF(国際通貨基金)

の3つの国際機関の事を指しています。

ギリシャ一国の問題で済めばまだ傷口は浅いのですが、ギリシャ国債は国外投資家の保有率が70%以上です。
ギリシャ国債の返済が不可能になれば、ドイツやフランスなどEUの主要国の大手銀行にも被害が及びます。

連鎖的な金融危機を避けるため、ギリシャ政府にEU・ECB・IMFが資金援助する事態になりました。

  • 2010年5月(第一次支援):1100億ユーロ
  • 2011年7月(第二次支援):1300億ユーロ
  • 2011年10月(ヘアカット=借金棒引き):1070億ユーロ

合計額は、約3500億ユーロにのぼります。

額が大きすぎてピンと来ないので、日本のGDPに置き換えて考えてみましょう。

日本のGDPは約5兆ドル。
ギリシャの約20倍です。

3500億ユーロ×1.1(ドル換算)×20倍(GDP比率)
7.7兆ドル

日本で例えて言うと、アメリカやIMFから800兆円借金をしている状態という事になります。
もはや属国状態です。

6)”Austerity” 「緊縮財政」

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(出展:the Nest

「緊縮財政」は、“Austerity”と言います。

政府が借金を返す方法には、大きく分けて二通りあります。

一つには、紙幣を刷って返済に充てる方法。

二つ目は、一般家庭と同様に、支出を減らして収入を増やし、黒字分を返済に充てる方法。

ギリシャはユーロを通貨として採用しているので、前者の方法はとれません。
※ユーロを印刷できるのはECBだけ

となると二番目の方法、「支出を減らして収入を増やす」しかありません。

「支出を減らして収入を増やす」ため、
2012年11月、ギリシャ議会は緊縮財政法案を可決しました。
主な内容としては以下の通りです。

  1. 増税
  2. 年金支給額の削減
  3. 年金支給開始年齢の引き上げ
  4. 公務員をリストラしやすくするための法律改正

「ギリシャ国鉄の公務員は乗客より多い」
などという都市伝説もささやかれていますが、実際はそこまで多いわけでもなさそうです。

経済協力開発機構(OECD)の2008年時点のデータによると、ギリシャの労働人口に占める公務員比率(国営企業の従業員含む)は20.7%で、フランスの24.3%やオランダの21.4%よりも少ない。この数字を見る限り、ギリシャだけが突出した“公務員天国”ということにはならない。

(出展:日経ビジネスデジタル

何にせよ、国民の負担が増える事には変わりません。

緊縮財政に反対する国民のデモが何度も行われ、動員数は毎回数万人規模です。

7)”Snap Election, Grexit(?)” 「総選挙、からのギリシャのユーロ離脱(?)」

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(出展:SOCIALIST WORKER.org

政権与党がすっかり国民から嫌われてしまったので、野党が力を伸ばしてきました。

Syriza, which opposes Greece’s international bailout program, would garner 33.1 percent of the vote, versus 29.7 percent for the party of Prime Minister Antonis Samaras

(出展:ロイター

(2015年)1/10の調査では、野党「Syriza」の支持率が33%、与党の支持率が30%となっています。

Syrizaは緊縮財政に反対しているため、総選挙に勝てば、緊縮財政法案が廃止される可能性があります。

Syriza党首アレクシス・チパラス氏は、
「ユーロから離脱するつもりはない。」
と発言していますが、
『借金を返すつもりが無いなら、(ユーロ圏から)出てってよ。』
と他のユーロ圏主要国や国際機関から言い渡される恐れはあります。

ドイツのメルケル首相のアドバイザーも、
「ギリシャがユーロを脱退しても、ユーロの基盤に影響はない」
と予防線を張っており、ギリシャのユーロ脱退、“Grexit”が現実味を帯びてきました。

感想

「ギリシャがユーロを離脱する」という話はもう何年も前から言われてきている話なので、正直、オオカミ少年化している感はあります。

政府の借金が多い日本としては、ギリシャから学ぶ余地は大いにありそうです。

ユーロ導入当初から、各国の財政政策と、ECBの金融政策の不整合性は指摘されていました。
ギリシャの財政危機は、起こるべくして起きている現象です。

「ギリシャ人が働かないから悪い」
「お金を援助してもらっておいて、返さないなんて最低」

というような意見もあるかもしれません。

ですが、ユーロ導入はそもそも、
「中央(ドイツ・フランス)が周辺(ギリシャ・アイルランド等)に投資しやすくするための金融規制緩和」
という意図を持っていました。

であれば、ドイツ・フランスがギリシャを助ける義務を負うのは当然のような気がします。

いずれにしても、総選挙の結果が気になるところです。

参考

1)
2)
3)
  • For Greece, A Lesson in Addressing Structural Problems, Not Symptoms | University of Chicago
  • Government deficit / surplus as a percentage of GDP | OECD
  • How Goldman Sachs Helped Greece to Mask its True Debt | Spiegel Online
4)

ギリシャの長期金利(10年物の国債利回り)推移グラフ|海外投資データバンク

5)

Greek bailout concerns top euro group meeting | Irish Times

6)

Greek Parliament Narrowly Passes Deep New Cuts | spiegel

7)
  • SYRIZA’s Tsipras Fends Off Grexit Suggestions | novinite.com
  • Germany Says Grexit “Manageable” | Zero Hedge
その他)

Greece did not cause the euro crisis | the Guardian