この記事では、2016年4月24日のBBC Global News Podcast “Merkel visits Trukish migrant camp”から、日本人サラリーマンの育休問題に言及した部分を採りあげます。
“Your kid is not making a penny for company.”
(お前の子どもは会社に一円も貢献していない)
(Anchor) Japanese men are legally entitled to up to 6 months paid leave when they have their children, but harassment from employers and colleagues is so intense and almost none of them do so.
A member of Japanese parliament recently received hundreds of angry messages after he said he was going to take paternity leave.
Rupert Wingfield-Hayes reports.
(Reporter) At his home in northern Japan, Daihei Goto is cooking dinner. It’s something he does often these days.
Daihei and his wife, Ikuko, has just had their second child, and Ikuko works full time.
Fathers like Daihe, are still rare in Japan. In 2015, the country was ranked 101st out of 145 in gender equality, just above Swaziland.
But even young fathers like Daihei, who do want to pull the weight on home, can find it very hard.
When Ikuko got pregnant with their first child, Daihei decided to apply for a paternity leave, as he was entitled to by law.
(Daihei) The next day, I got a call from my boss. I was summoned to a meeting with the senior management. They asked me, why did I hand in such a request?, what was I thinking?
They didn’t accept it.
(Reporter) Daihei backed down. He would not take a paternity leave. But he still needed to help his wife at home.
(Daihei) One day, my wife was sick and my daughter got sick, too. I needed to stay home to take care of them. I called and asked day-off. My boss said, “You cannot take the day-off, just because your kid is sick. Your kid is not making a penny for company.”
(Reporter) He quit. He took a part-time job instead at a local university.
日本語訳
(キャスター)日本では、男性に6か月の育児休暇が法律で認められています。しかし、雇用主や同僚からの圧力によって、ほとんどの男性が育児休暇を取得していません。
最近、育児休暇取得の意志を表明した国会議員は、何百もの怒りのメッセージを受け取ることになりました。
ルパート・ウィンフィールド・ヘイズがお伝えします。
(レポーター)ゴトウ・ダイヘイ氏は、北日本にある自宅で夕食を作っています。最近の彼にとっては普通のことです。
ダイヘイと彼の妻・イクコは、二番目の子どもを授かったばかりです。イクコはフルタイムで働いています。
ダイヘイのような父親は日本ではまだ珍しい存在です。2015年、日本は男女共同参画社会に関して145か国中101番目という低い評価を受けました。スワジランド(※)の一つ上です。
イクコが第一子を妊娠したとき、ダイヘイは法律に認められているように育児休暇を取得しようと考えました。
(ダイヘイ)次の日、上司から電話がありました。私は経営幹部との会議に呼び出されました。彼等は私に、「なんでこんなものを申し込んだんだ?」「一体何を考えているんだ?」と尋ねました。
経営陣は育児休暇を認めませんでした。
(レポーター)ダイヘイは引き下がりました。育児休暇を取得しませんでした。しかし、彼には依然、自宅の妻の手助けをする必要がありました。
(ダイヘイ)ある日、妻と娘が病気になりました。私は自宅で彼女たちの看病をしなければいけませんでした。会社に電話して休もうとしました。しかし上司は、「たかが子どもの病気くらいで休めるわけがないだろう。お前の子どもは会社に一円も貢献していないじゃないか?」と言いました。
(レポーター)ダイヘイは会社を辞めました。彼は代わりに地元の大学でパートタイムの仕事をしています。
※「スワジランド」はアフリカ南部の立憲君主国。1968年にイギリスから独立。人口は約100万人。一夫多妻制の国で、国民の平均寿命は約40歳(2008年時点)。
40 percent want to take, only 2 percent took.
(40%が育児休暇を望んでいるが、実際に取得するのは2%だけ)
(Reporter) Daihei’s experience is extremely common. And it helps to explain maybe why so few Japanese men take paternity leave.
Have last count 2.3 percent of fathers here took any paternity leave at all. Truth is, most are just too scared.
The story of intimidation and bullying is so common here, they have been given it a name, “Patahara”, paternity harassment.
I’m on my way now to meet another Japanese dad, who is trying to do something to change that.
Shimon Sato is taking his son to school. He is also about to take 3-month paternity leave, following the birth of his second child.
(Shimon) My English is not so good.
(Reporter) It sounds pretty good to me. (laughter)
(Reporter) Shimon works for a British human rights organization. His work there has inspired him to start a support group for other Japanese dads, who are too afraid to take a paternity leave.
(Shimon) 40 percent of Japanese young men want to take a paternity leave, but the result is only 2 percent took a paternity leave.
Most of Japanese men are afraid if they take a paternity leave, there is a big obstacle for their promotion.
(Reporter) At Shimon’s home. I’m introduced to another young father. He doesn’t want me to use his real name.
He works for a Japanese big construction company. He says he constantly harassed because he leaves early each day to collect his kid from school.
(Man) I’m the only male employee who goes home at the same time every day. My boss schedules weekly meetings, that starts after I go home. Then he denounces me saying, “Why do you think you can get away with not coming to the meetings?”
日本語訳
(レポーター)ダイヘイが経験したことは珍しいことではありません。ほとんどの日本人男性が育児休暇を取得しない裏には、ダイヘイと同じような状況があるのかもしれません。
最近の調査では、育児休暇を取得した父親はわずか2.3%とのことです。実際のところ、多くの日本人男性は単に怯えすぎているのです。
日本では、上司からの嫌がらせやいじめはありふれています。この行為には「パタハラ」という名前が付けられています。パタニティ・ハラスメントです。
この状況を変えようとしている一人の日本人の父親に、これから会いに行きます。
サトウ・シモン氏は、息子を学校に見送っています。二番目の子どもの誕生に合わせて、3か月の育児休暇を取得する予定です。
(シモン)私の英語はあまり上手ではありません。
(レポーター)充分上手ですよ(笑)
(レポーター)シモンはイギリスの人権団体で働いています。人権団体での仕事に影響を受け、彼は育児休暇を取得に悩んでいる日本人男性を支援する団体を立ち上げました。
(シモン)若い日本人男性の40%が育児休暇を取得したいと考えています。しかし、実際に取得するのはたったの2%です。
ほとんどの日本人男性は、育児休暇を取得することで社内での自分の立場が悪くなると考えています。
(レポーター)シモンの家で、私は別の若い父親に会いました。彼は名前を伏せてほしいと私に依頼しました。
彼は日本の有名な建設会社で働いています。息子を学校に迎えに行くために彼は毎日早めに退社していますが、継続的に嫌がらせを受けていると言います。
(男性)残業せずに帰宅する男性社員は私だけです。上司は毎週会議の予定を入れますが、その会議はいつも私が帰宅した後に始まるのです。上司は、「会議に出席せずに済むと思っているのか?」と私を非難しています。
Men still haven’t changed.
(男は何も変わっていない)
(Reporter) A Tokyo Meiji University professor Yuiko Fujita, has been studying the problem of paternity harassment.
She has limited sympathy for Japanese fathers who say they want to do more, but can’t.
(Yuiko) Majority of young male workers gave up taking a paternity leave, because they don’t want to sacrifice their career for their children. If they really want to take it, they can. Men seem to have a chance, but, I think, they still haven’t changed.
(Reporter) Professor Fujita says, the fact that so few Japanese men take paternity leave, or help their wives with child rearing, is having a disastrous effect Japan’s birth rate.
(Yuiko) Because Japanese men continue to work long hours, their wives hesitate to give birth to second child. Many women work full time. At the same time, they need to take care of children alone. It is too hard.
(Reporter) Japan now has the second lowest birth rate in the world, and almost no legal immigration. Unless Japanese men start to change their way soon, this country is going to start disappearing.
日本語訳
(レポーター)明治大学のフジタ・ユイコ教授は、パタニティ・ハラスメントに関して研究をしています。
育児休暇を取得したいのにできないと言っている日本人の父親たちに対して、彼女はあまり同情していないと言います。
(ユイコ)多くの若年男性労働者たちは、育児休暇取得をあきらめています。子どもたちのために、社内で自分たちの立場が悪くなるのはゴメンだと考えているからです。もし本当に彼らが心から育児休暇を取得しようと思っているのなら、取得することは可能です。チャンスはあるけれども、私が思うに、彼らはいまだに昔の考えを引きずっているのです。
(レポーター)日本人男性が育児休暇を取得せず、妻に育児の負担を押し付けていることで、日本の出生率に致命的な影響を与えているとフジタ教授は言います。
(ユイコ)日本人男性が長時間労働を続ければ、妻たちは二人目の子どもを産むことを躊躇します。多くの女性たちがフルタイムで働いています。仕事と同時に育児も一人でやらなければいけません。うまくいくわけがありません。
(レポーター)日本は世界でも下から二番目の低い出生率を記録しています。移民に関しては全くと言っていいほど受け入れていません。日本の男性たちがすぐにでも変わらなければ、この国は消えてしまうでしょう。
まとめ
「お前の子どもは会社に一円も貢献していない!」とほざく上司がいるような会社を辞めるのは、極めて正しい選択です。そんな会社はつぶれた方が世のためです。
フジタ教授は「男性には同情をあまり感じていない」と手厳しいですが、確かに一理あります。
現状を嘆くばかりで行動に移さなければ、何もしていないのと同じです。
匿名男性が「会議を休むと上司が非難してくる」、「男性社員で早退しているのは自分だけだ」と愚痴をこぼしていますが、上司を含む周囲とのコミュニケーションや根回しが足りていなかった可能性や、自分の軸が定まっていないような印象も受けます。
とはいえ、この方は育児に協力して行動しているだけマシな方です。シモンさんのような愚痴を受け止めてくれる仲間がいるのは心強いことでしょう。
ところで、CIAの統計によれば、2015年の世界最低の出生率はシンガポールの0.81です。
世界銀行の統計によれば、2014年の世界最低の出生率は韓国の1.20。
日本は下から2番目ではなく、
- マカオ
- 台湾
- 香港
- ボスニア・ヘルツゴビナ
- モントセラト
- ポーランド
- ルーマニア
- スロベニア
などが下意に控えています。