2014年2月号のEnglish Journalを参考に、スピーキング力上達の方法を採りあげます。
NHKラジオ講座やアルクの通信講座等の講師、NHKなどの放送通訳も務める柴原智幸氏。現役の同時通訳者である柴原氏がお勧めするスピーキング上達方法は次のようなものです。
1)シンクロリーディング
英文スクリプトを見ながら音声を聴き、聞こえてきた英文を口に出していきます。
「テキストを見ながら行うシャドーイング」とも呼ばれ、音と文字を結びつけるよい練習になります。
2)シャドーイング
英文スクリプトを見ないで、聞こえてきた英文を口に出していきます。
英語の、
- 発音
- リズム
- イントネーション
(3つを合わせてプロソディーと言う)
を頭と身体に叩き込むのに効果的なトレーニングです。
3)オーバーラッピング
英文スクリプトを見ながら、聞こえた英文に自分の声をぴったりと重ねていきます。
息継ぎのタイミングまでまねることになり、英語のプロソディーを吸収する上で、究極のトレーニングと言えます。
4)やまと言葉落とし
英文を直訳するだけではなく、自分にとって腑に落ちる日本語に訳することで、英文をより深く理解するプロセスです。
例
元の英文
They knew that he was going to be taking this break, everybody was just laser-focused on this movie.
And really every department was just lifting each other.
It was really fun, and it was just great collaboration.
元の訳
スタッフも、彼がこれで休業することも知っていたせいでしょう。誰もがこの映画にものすごく集中していました。
そしてまさに、それぞれの部門が互いに高め合っていました。
本当に楽しくて、素晴らしい協力体制でした。
変更後の訳
みんな知ってたんですよ、彼がこの映画のあと休みに入ることを。みんなこの映画に全力で集中していました。
本当に全ての人たちがお互いを高め合っていました。
とても楽しくて、最高の仕事場でした。
5)音読
ここからは自力でイチから音をつくっていきます。
お手本音声に似せることはあまり考えなくて構いません。
意味を考えながら、強調すべき部分を意識して音読します。
6)英文暗唱
お手本の英文を、完全にそのまま覚えてしまうことです。
英文暗唱をすることにより、正しい英文の型を自分の中に取り込みます。
自分で話すとき、書くときに、文法的に正しい英文を自力で組み立てるには、いくつか「定型文」を自分の中にストックしておくと便利です。
7)モード転換
元の英文を自分の主張したい内容に変えて発信します。
元の英文の単語や表現を部分的に変えることで、自分が言いたいことを伝えられるようにします。
元の英文
They knew that he was going to be taking this break, everybody was just laser-focused on this movie.
And really every department was just lifting each other.
It was really fun, and it was just great collaboration.
転換後の英文
He knew that she was going to be coming home very soon, he was just laser-focused on his cooking.
And really every ingredient was just lifting each other.
It was incredibly enticing, and it was just great dinner.
(彼は彼女がとても早く帰ってくることを知っていた。彼は料理にとても集中していた。
食材の組み合わせは絶妙だった。
彼の料理は信じられないほど魅惑的で、最高の夕食だった。)
実際のトレーニング方法
- シンクロリーディングを最低10回
- シャドーイングを最低10回
- オーバーラッピングを最低10回
- やまと言葉落とし
- 音読を最低10回
- 英文暗唱
- モード転換
まとめ
結構ハードなトレーニングです。
一日でやろうとすると多分挫折します。何日かに分けてやっても良いでしょう。
「やまと言葉落とし」というネーミングはあまりにもイケてない気がします。「自己流翻訳」と解釈すれば良いかもしれません。
シャドーイングやオーバーラッピングは英語のイントネーションを身につけるのに最適な手法ですが、マネする音声は選んだ方がいいです。
日本人の彼女の言葉をマネして日本語を覚えた外国人男性がオネエ口調になってしまうように、自分が好きだと思える話し方の人を選ばないと、おかしな英語を身につけてしまう危険性があります。